服は着ていればボロボロになっていくものだ。
それも僕のように毎日寝床から机の前から食卓から、
ずっと同じ格好をしていればボロボロになっていくのもいっそう早い。
ボロボロになるというのは悪いことだろうか。
逆にそれだけ愛着をもって着続けられたことの証ではないのか。
だから僕はボロボロになった服や草履やリュックサックを自分では捨てられない。
そういうもののほうで、象の墓場のように、そっと僕の暮らしを離れて見えなくなってしまう。
服の墓場というのはあるのだろうか。
そこはボロボロのものばかりだが誇りにも満ちて光り輝いている場所だろう。
ボロボロになったかなりそうな服を、新しい藍で染めかえてもらうというのは、
生まれ変わらせることではなく「お疲れさん」と
長い間の全身の働きをねぎらってあげるぐらいのことかもしれない。
染めかえが済んで家に戻ってきた服は照れくさがっていつつ、
嬉しそうに身をよじったりして見えるのだ。
2010年1月 恵文社イベントでbefore→afterにご協力いただきました
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